ひとりごと
何かを新しく知ったからとて何が変わるというのだろう
気になったから知りたいと思った
興味がわいたから調べてみた
なんにもならなくても「その時」は少なくとも楽しいと思えた
人生は長い長い暇つぶしだと言った作家は誰だったか
地位も名誉も野心もないが
広大な言葉の海の中を泳ぎまわり
知らないことを知るのが趣味だった
苔むすほど昔から人は知識欲を満たすため
訳のわからない世の中を言葉であらわそうとし
理論を生み出し技術を発明し
死にものぐるいであがいてきた
嫉妬や憎しみや殺意を言葉で表現する
言葉にするという事は「知らなかった事を知る」という事で
恐怖を何とか克服しようとする試みだ
人は「訳がわからない」という事をそれほどまでにおそれる
臆病な人間ほど勉強好きなのはきっとそのせいだろう
好奇心は言い換えれば恐怖を克服しようとする
人間に与えられた救いみたいなものかもしれない
たとえそれが間違った結果しか生まないとしても
そうせずにはいられない人間にとっては
書物というものが福音であり呪いでもある
辞書などはその最たるものだがそこに答えを見出す人はまれだろう
人生や恋愛やあらゆる事を読みながら人は彷徨う
何もかもわからないなら
知った風な事もきいた風な事も言ったところで虚しいなら
真実の言葉さえ口にした途端に嘘に聞こえるなら
せめて笑いたい
言葉のむずかしさはそこにある
それでも言葉の呪いに囚われもどかしさに悶え
それでも言葉を追い求める
まったくなんて因果な事だろう
酒と恋人がいなければ人生などまったく味気ないものだろう
それさえも本当の救いにはなりはしないと
実はみなわかっているとしても
せめてそれくらいは人生のページのかたすみにそっと大事にしておきたいと思う
言葉ってなんだろう